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サムネイル:ためしに書いてみた小説をさらに良くする(※1)「文章」の話 (※1:効果には個人差があります)

こんにちは。皆さん、小説書いてますか?
私は進捗だめです。

小説が書けないので、初心に帰って初心者向けに小説の書き方を書くことにしました。

今回は「試しに書いてみたえらい!!!小説をより良くする」方法を私の経験に沿って解説します。小説をこれから書くために必要なストーリーの組み立て方魅力的なキャラクターの作り方の解説はありません。逆に私が何か知ってると思いますか?

ここではステップ1として文章の不自然な箇所を減らす方法、ステップ2として文章の表現の幅を増やす方法をそれぞれ解説します。

対象読者は小学校高学年以上です。っていうかここで紹介する多くのテクニックは私が中高生のときにやってたことなので、誰でも簡単に活用できるはずです。

この記事で紹介するテクニックは一般的な文章上達テクニックです。小説執筆だけでなく普段のレポート制作・ビジネスメールの文面・日記やブログ記事のブラッシュアップなどにも使えます。小説を書かない人も、活用できそうな箇所があればご活用ください。


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ステップ1:文章の不自然な箇所をなくす

音読する(リズムを確かめる)

文章の違和感を潰すためには文章を読み返すのが一番です。とはいっても初心者のうちは、読み返しても、文章のどこがおかしいのか判別できないかもしれません。

そこで、ただ読み返すだけでなく実際に声に出して読んでみることをおすすめします。朗読や演技のように抑揚をつける必要はなく、小声でOKです。

音読を通じてまずは会話シーンの不自然な箇所が分かります。ひとつのセリフ内の不自然な言い回しだけでなく、複数人の会話の掛け合いの速度やバランス(誰かが一方的に喋っていないか等)も見直せます。

地の文のリズムを確かめるのも重要です。「意味は通じるんだけどなんか不自然だな?」という一文や、似たようなリズムの文章が続いて読みにくく感じる段落(文章の集まり)を見つけることができます。

「似たようなリズムの文章が続いて読みにくく感じる」段落の改善には、文の終止形を見直してみてください。「〜だった。〜だった。〜だった。」と同じ音の終止形が連続すると、意図的にそうしているのでもない限り、読者にはなんだかたどたどしく感じられます。

一例として、青空文庫から『吾輩は猫である』の有名な冒頭を引用します。引用箇所のあともさまざまな終止形が登場している点に注目してください。こうして読み返すと、名文はやっぱりゴロが良いですね。

 吾輩は猫である。名前はまだ無い。

 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

 

夏目漱石 (1905)『吾輩は猫である』,
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/789_14547.html
(アクセス日:2022/08/28)

最初は「〜だ」と「〜ある」は(何も考えずに)交互に配置するとなんかリズムがよくなる(っぽい)からやっとこ! という感じでとりあえず試してみるのが良いと思います。っていうか中学生の山川がそうでした。

自分の小説を読み返す反省を通じて、最適なリズム感はそのうち見についてきます。慣れてきたら音読しなくても、小説を書きながらリズム感を掴めるようになります。たぶん。

 

対象を明らかにする

例えば、謎の人物Aが現れ、Aを追って謎の人物Bも現れるシーンがあるとします。「次の瞬間、その人影は〜をした。」と文章が続いたとき、「その人影」はAかBか、読者によって意見が分かれる可能性はないでしょうか?

不明な対象が複数登場する場合は、文中の指示代名詞がどちらを指しているのか注意し、読者には内容が伝わるように丁寧に描写した方が良いです。

「状況のスピード感を損ねないように状況描写はシンプルにしたい」という作者の意図も働きそうな場面ですが、説明不足で読者の理解が追いつかなくては本末転倒です。説明不足と説明過剰なら説明過剰の方がまだマシです。最低限「状況がわかる」文章を作ってから、ほかの場所で工夫しましょう。

 

整形する

「音読する(リズムを確かめる)」の項目と合わせて、文章が読みやすくなるよう修正しましょう。

例えば、冗長になりがちな表現「~すること」はこのように整形できます。

  • 音読することで → 音読を通じて(表現を言い換える)
  • 見直すことができます → 見直せます(「することができる」を圧縮)

場合によっては「~することができる」という表記が適切な文章もあるので、全てを書き換える必要はありません。ただ、多用しがちな「~することができる」は書き換えが可能な表現であると意識しておくのは良いと思います。

ほか「特にこだわりがなければ漢字から平仮名に替えたほうが読みやすい箇所」などのノウハウも巷に転がっています。気になったら『記者ハンドブック』などでルールをチェックしてみてください。

例:「書き始める」「〜する事が出来る」→「書きはじめる」「~することができる」
補助的な意味の言葉は平仮名の方が望ましいそうです。


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ステップ2:表現の幅を増やす

類語辞典を使う

むかしむかし、小説ビギナーのYさん(仮名・10代)は登場人物Aが発言するシーンを次のように書きました。

「〜」とAは言った。

やがてYさんは、言葉の裏にあるAの感情を伝えるために次のように直しました。

「〜」と不服そうにAは言った。

自分の小説を読み返したYさんは、登場人物のセリフの次にくるのが「〜と言った」ばかりになるのが気になり、「〜と言った」の部分を全部修正しました。

「〜」と言ってAは肩をすくめた。

そのうちYさんの小説は、登場人物が肩をすくめまくり、眉間に皺を寄せまくる、肩こり&眼精疲労待ったなしのストーリーになりました。おしまい。

 

上記のようなしくじりは、小説を書きはじめたばかりの10代の作者にはよくある話です。

この状態から脱出できるよう、語彙のバリエーションを増やすために類語辞書を使いましょう。

紙の辞書・電子書籍・アプリケーション・ほか、使えるものなら何でもいいです。これらを持っていなければ、まずはWeb上で無料で使える類語辞書を使ってみてください。

Webで使える類語辞典の例

Weblio類語辞典
https://thesaurus.weblio.jp

連想類語辞典
https://renso-ruigo.com

goo類語辞書
小学館『使い方の分かる 類語例解辞典 新装版』を収録
https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/

収録語の数・種類は「Weblio類語辞典」が一番です。goo辞書は小学館発行の辞書を収録しているので意外とクオリティが高いです。

著者の文化圏には注意

三省堂『新明解類語辞典』、角川書店『類語国語辞典』など、日本文化に馴染んだ著者が日本語で書いた日本語類語辞典は、何を選んでも使用に問題ないと思います。

しかし海外の類語辞典をみると、収録されている文例が日本文化と馴染みのないものばかりの可能性もあります。日本の日常生活に限って題材にしたい作者は、著者の文化圏(著者が当初想定していた辞書のユーザーの文化圏)に注意が必要です。例えばフィルムアート社の『場面設定類語辞典』のシリーズはアメリカの文化をもとに書かれています。

もちろん言語・文化圏の違いを超えた普遍的な表現もあると思います。

海外の著者の作品に限らず、辞書を買うときは可能なら書店や図書館で内容を確かめてから購入するのをおすすめします。

 

他の小説を書写する

絵の上達に模写が有効であるように、小説の上達にも模写はトレーニングになります。

やり方は、「元の文章を見ないで(頭で覚えて)書き写す」こと、「間違えた部分は消さずに赤ペンなどで残しておく」ことです。

詳しいやり方はこちらのブログ記事をご覧ください。読書猿(くるぶし)さんの記事はすべて一読の価値があります!

書き写す/人文学(ヒュマニティーズ)の形稽古 その1
読書猿Classic: between / beyond readers
https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-323.html


参考になったかもしれない本・リンク集

最後に、中高生の頃の私が読んでいた「小説の書き方」の本と、現在使っている類語辞典を紹介します。

実践的なハウツー

清水良典 (2006)『2週間で小説を書く!』幻冬舎新書

なんの変哲もない公立バカ中学校の学級文庫になぜか置いてあった本です。

この本はストーリーの組み立て方ではなく、文章の書き方自体、いわば文体の身につけ方を教えています。だったと思います。最後に読んだのはなにぶん中学生のころだったので記憶がございませんが、本書の練習問題は一も二もなくやってみていたと思います。

今読み返したらどう思うかはわかりませんが、初学者がまず手にとってみるには、こういう実践的なハウツー本はありかもしれません。

読書猿氏の記事

小説の作業分割の詳細についてもご教示いただけないでしょうか
https://scrapbox.io/marshmallow-rm/小説の作業分割の詳細についてもご教示いただけないでしょうか

 

類語辞典

小内一 (2015)『てにをは連想表現辞典』三省堂

出版社ページ:
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dict/ssd13641

内容はこんな感じです。一般的な類語辞典と異なり、ある言葉の前に続く表現・後に続く表現を提案する(連想をつなげていく)形式で、表現が収録されています。

 

実践的でないハウツー

保坂和志 (2008)『書きあぐねている人のための小説入門』中公文庫

なんの変哲もない公立高校の図書室にあった本です。あとで自分で買いましたが、誰かに貸したまま帰って来ず、誰に貸したのかも覚えていないため取り立てもできません。

これは「激流に身を任せどうかしている」タイプの小説執筆精神論で、芸術としての小説の本質に迫る書籍です。高校生の私はまんまとタイトルに騙されて通読し、まんまと保坂和志の読者になりました。読み返したいのはやまやまなのですが、本当に誰が借りパクしているんでしょうか?


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いかがでしたか?

今回は「試しに書いてみた小説をより良くする」ためのハウツーを公開しました。

読みましたね? こんな小手先のテクニックなんか読んでもしょうがないんですよ。手を動かせ。さあ早く執筆に戻るんだ。

 

冗談はさておき、作品を書いた人が一番立派なんです。

この記事では、小説をまずは1作書いてみた方やこれから小説を書いてみたい方に、「私が一度は試してみたこと」を紹介しました。もし私を信じるのならお試しください。

 

以前書いた記事

初期農法を推奨するろくでもない記事です。

 

こいつ偉そうなこと言ってるけど本当に小説上手いんか?

と疑問に思った方のための自作品リスト(CM)です。まあ「ひどくはない」レベルではあると思います。「上手い」かどうかは知りませんし、「面白い」かどうか判断するのは読者の都合なので私の知るところではありません。

これらの作品のすべては、大衆文学的な分かりやすさや、謎解きとカタルシスのない作り方をしています。海外翻訳文学に慣れている読者には違和感のない作風だと思いますが、そうでない読者にとっては初めて食べる味付けに感じられるかもしれません。今までの読書で出会ったことのない奇異さを、じっくりとお楽しみいただければ幸いです。

これは物語ではない
これは物語ではない

Web小説・だらだら連載中

都内某所で起こった幽霊騒動の正体はホームレスの透明人間だった。
成り行きで透明人間と邂逅した青年・帆来くんは、成り行きで喋らない少女・セレスタも拾い、二人を居候として家に迎える。
一方インターネットを通じて、幽霊騒動の行き着く先を探しつづける人々がいた。
数々の行き違い、隠れた因縁、謎の先駆作、存在しない筈の海の気配、それぞれの秘密を抱えながら何でもない生活は続く。

……というのはただのイントロであり、これは物語ではない

Drive to Pluto
Drive to Pluto

Web小説・うろうろ連載中
本作は『これは物語ではない』act.3で明かされる内容を前提としています。

1997年結成・2006年に活動停止した架空のロックバンドの「逸話」を掲載するシリーズ。
ゼロ年代の東京を舞台に、歌詞があるのに歌が聴こえない特異なスタイルのロックバンド「Drive to Pluto」の結成秘話をはじめ、日常のオフショット、作曲の裏側、幼少時代、そして活動停止までを描く。

Cipher
Cipher

書籍作品(完結)

黒い本文紙に黒いインクで印刷した特殊装丁本。困難な読書体験を通じて、本と読者の関係や、文字が「見える」「読める」こと、物語を読み解く行為それ自体を問い直す作品。

演劇産業で栄える街の安酒場でピアノを弾くXのもとに、新進気鋭の舞台俳優・0が来店する。0は日々に疲弊し、Xは離人感を抱えていた。二人の交差をきっかけに街の歪みが綻びはじめる。

入江にて
入江にて

Web小説・短編(完結)

海辺の寒村、出稼ぎの兄が拾ってきた水死体の青年に、留守番の妹は「ヨドミ」という名前をつけて飼い始める。水死体で孤独をまぎらわす少女の話。

Author : 山川 夜高

山川 夜高

libsy 管理人。DTP・webデザインを中心とした文化的何でも屋。
このサイトでは自作品(小説・美術作品)の発表と成果物の紹介をしています。blogではDTP等のTIPSを中心に自由研究を掲載しています。
お問合わせは contact からお気軽に。

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