PCを使って印刷物を作るときにたぶん一度は疑問に思う「RGB」と「CMYK」の話です。そもそもCMYKって何? なんでCMYKで入稿しないといけないの? と思ったらこちらをご覧ください。
あくまでも初心者向きの解説を目指したので、説明は詳細を省いて簡単な表現に留めています。また「なぜ青は青色に見えるのか?」などといったそもそも物が見える理由まではさすがに網羅できません。
参考: 色 – Wikipedia
色の数値化 – RGB・CMYK
RGB・CMYKというのは、本来抽象的なものである「色」を「数値化」する測り方のことです。
本来、色とは抽象的なものです。ディスプレイや印刷物といった機械が色を再現するには、色を数値化して扱わなければなりません。
RGBでは、ある色をつくるために使う「Red(赤色)」「Green(緑色)」「B(青色)」の光を数量で表しています。
R,G,Bごとに光の量を10進数で0〜255(16進数で00〜ff)の刻みで表します。
CMYKでは、ある色をつくるために使う「Cyan(シアン/青色)」「Magenta(マゼンタ/赤色)」「Yellow(黄色)」と、K(キープレート/後述)である黒のインキの量を表示しています。
C,M,Y,Kごとにインキの量を0%〜100%で表します。
色の作り方 – 加法混色・減法混色
色の作り方には大きく2種類があります。それはRGBで表す「光を混ぜる方法」と、CMYKで表す「絵具を混ぜる方法」です。下の2つの図は、同じ色をRGB(加法混色)とCMYK(減法混色)でそれぞれ作った結果です。
(RGB・CMYKは互換性がありません。そのため出来上がる色を比較すると、微妙に異なる色になります。)
光の加法混色
TVやPC等の液晶画面は、ディスプレイ自体が光っていることで色や文字を表現しています。光は「赤色光(Red)」「緑色光(Green)」「青色光(Blue)」を混ぜると、黒(光っていない状態)から白(一番明るい状態)まですべての色を表現することができます。
赤・緑・青の光をすべて混ぜると白色光になります。光を足して色を作っていくので「加法混色」と呼びます。
絵具の減法混色
一方、絵具・塗料・インキなどは、素材(色を塗られるもの)がもともと持っていた色を絵具で遮ることで色彩を作ります。例えば、青い絵具が青く見える理由は、絵具が「青以外の色を吸収しているから」です。絵具の混色は光を混ぜる加法混色と異なり、光を吸収していく混色方法なので「減法混色」と呼びます。
減法混色で使われる三原色は「シアン(水色/印刷用語ではアイ)」「マゼンタ(濃ピンク/印刷用語ではアカ)」「イエロー(黄)」です。この3つを混ぜると理論上は一番暗い色=黒が出来ますが、実際のところは完全な真っ黒ではなく濁った色ができます。
そのため、印刷ではCMYの3色に黒インク(K)を加えて、黒や暗い色を再現しています。
印刷物にRGBを指定するとヤバイ理由
webサイトやデジカメの写真など、ディスプレイで処理される画像はRGBで作られています。ですが印刷物に使う画像やデータはCMYKで作らなければなりません。なぜならCMYKは印刷機に対してインキの使用量を命令する色指定だからです。
RGBで作られたデータを印刷機に送ると、印刷機側で適当にCMYKに変換されます。ここで問題なのは変換が「テキトー」であることです。RGBのディスプレイではいい感じに見えた色も、CMYK変換によって損なわれる可能性が高いです。
図は、C型色覚(もっとも人口の多い色覚)をもったヒトが認識できる色を数値化して座標にプロットしたものです。
ここでは黒い三角形の内側がRGBで再現できる色です(正確にはRGBのうちのひとつ「sRGB」で再現可能な色です)。
白線の多角形の内側がCMYKで再現できる色です。
CMYK=減法混色(絵具を混ぜる混色)で表現できる色の範囲と、RGB=加法混色(光を重ねる混色)で表現できる色の範囲は一致していません。
CMYKで再現できる範囲の外側にある色は、CMYK変換すると近似色に丸め込まれます。
例1
例として、CMYKで再現できない色 #4721ff をCMYK変換してみました。これは顕著に変化してしまう一例です。
例2
既存のイラスト(RGB)もCMYKに変換してみました。明るいピンクや空の色など、彩度の高い色の変化が著しいことが分かります。
RGB→CMYKへの変換方法(プロファイル変換)も色々ありますが、専門的になりすぎるのでここでは割愛します。
結論: はじめからCMYKでデータ作成しよう
というわけで、可能であれば印刷物用のデータは最初からCMYKで制作した方が良いです。CMYKで表現できる範囲で華やかに見える色使いを考えましょう。
それでもRGBの色を再現したいとき
とは言っても、CMYKでは作れない明るい色を印刷しなければならない時があります。
RGB的な明るい色を再現する方法は、オフセット印刷を使用するかオンデマンドプリントを使用するかによって異なります。
オフセット印刷:特色印刷
蛍光ピンクや透明感のある肌色を印刷するとき、CMYKのマゼンタを蛍光ピンク(KP)に差し替えたり、CMYK+蛍光ピンクの5色で刷ると、明るい暖色を再現できます。
同様に、明るい黄緑や水色、金・銀・白など、CMYKの混色で再現できない色は、混色ではなく特色インキを使って再現しています。
オンデマンド機での高彩度印刷について
オンデマンド機にはRGBの鮮やかな色を再現できる機種もあります。たぶんトナーの色が従来のオンデマンド機よりも鮮やかなんじゃないかと思います。
「オンデマンド RGB」「オンデマンド 高彩度印刷」などのキーワードで見つかると思いますので、各自比較してみてください。RGBデータで入稿し、だいたい基本料金+割増で刷れるようです。
っていうかCMYK変換できない作業環境のひとにはRGB入稿での高彩度印刷がベストアンサーなんじゃないでしょうか?
RGBとCMYKのまとめ
- RGBはディスプレイ(光)に対する指定、CMYKは印刷機(絵具)に対する指定
- 印刷物用のデータははじめからCMYKで作成する
- どうしてもRGBデータの彩度が必要なときは、特色インキの使用(オフセット)または高彩度オンデマンドプリントを使用する
以上です。かなり端折って書いたので誤りもありますが、「なぜCMYKで入稿しなければならないのか」という点は伝えられたかなと思います。
おまけ: 黒について
ここまで読んで「要するにRGBの鮮やかな色だけ気をつければ良いんだろ?」と思われるかもしれませんが、それは誤りです。
黒も気をつけなければならないポイントです。
RGBで定義されている黒(#000000)とCMYKで定義されている黒(K=0%)は同じ色ではない、という話です。
更におまけ: K=キープレート
CMYKのうち、CMYは Cyan, Magenta, Yellow の略です。しかしKは色名ではなく Key plate の略です。
キープレートとは、“他の版の見当合わせの基準となる版”です。黒版を基準に他の版の位置を調整していたので、黒がキープレートと呼ばれるようになったそうです。
他の説もあるそうですが少なくとも黒(Kuro)や blac"K" が由来というのは俗説です。
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