RGBの黒(R=0, G=0, B=0 / #000000)・CMYKの黒(C=0%, M=0%, Y=0%, K=100%)は、ディスプレイでの見た目が一緒でも中身は全く違うという話です。
RGB・CMYKってそもそも何? という話は 前回の記事 をご覧ください。
この記事はノンデザイナー向けの内容です。本当はもうちょっと色々あるところを、かなり省略して記載しています。
RGBでつくられた黒の問題点
RGBの黒(R=0, G=0, B=0 / #000000)をCMYK変換しても、K=100%の黒にはなりません。画像を見ると、#000000 はCMYKすべてのインクを含む色に変換されています。(同様に、K=100%の黒も、RGBでの完全な黒(#000000)ではありません。)
RGBの黒をCMYK変換する問題点は大きく分けて2つあります。
- ベタ塗りに使用する総インキ量が多い
- 版ズレによって、文字や細い線の見た目が損なわれる
問題点1: 総インキ量が多い
RGBの黒をCMYK変換した結果を見ると、「C=91%, M=88%, Y=88%, K=79%」になっています。この色をベタ塗りした色面は、合計346%のインキが乗せられることになります。
絵具を塗りすぎた紙が、絵具の水分・油分でシワシワになる様子を想像してください。総インキ量が多いと、印刷物でも似たようなことが起こります。
印刷所や紙の種類によりますが、おおむね総インキ量は300%以下が推奨されています。RGBで指定された黒は、この規定をオーバーする可能性が高いので、印刷には推奨されません。
問題点2: 版ズレで文字や細い線の見た目が損なわれる
オフセット印刷では、CMYK 計4色の版(≒ハンコ)をつくり、インキを4回重ねて印刷物を作成しています(金色などの特別なインキを使用するときは、版を合計5枚以上使うことがあります)。
オンデマンドプリントではCMYK 計4色のトナーを付着させて色を作ります。インクジェットプリントではCMYK 計4色のインキを吹き付けて色を作っています。これらも機種によっては5色以上のトナー・インキを使用します。
KのインキのほかにCMYなど複数の色を混色してつくられている黒色は、版やトナーのズレによって細い線がブレて、想定よりも太く見える可能性があります。版ズレによって線が太くなると、細かい文字の可読性が損なわれてしまいます。見た目も美しくありません。
オンデマンドプリントやインクジェットプリントでは版をつくらないので理論上版ズレは起きない筈ですが、出来上がった印刷物を見ると微妙にブレみたいなものが見えます。
文字や細い線など、すっきり細く見せたい要素にはK=100%の黒を使用しましょう。
K=100%の黒とリッチブラックの比較
K=100%に他の有彩色を少し足したものをリッチブラックと呼びます。実はK=100%は見た目には「真っ黒」ではなく、少し薄い焦げ茶色に見えたり、黒ベタに重ねた要素の色が透けて見えることがあります。有彩色を混ぜた濃厚な黒(リッチブラック)を使うと、濃く締まった黒色を表現できます。
リッチブラックのインキ量は印刷所によって推奨される数値が違いますが、おおよそ C40%〜60%, M40%, Y40%, K100% が使われています。KにCだけ足す・Yだけ足す といった使われ方をすることもあります。
図3上段は、通常のK=100%の黒の様子です。黒の上に、CMYなど他の色が重なっていません。そのため版ズレによって黒の回りに白いフチが見えてしまうことがあります。
図3中段は、K=100%の黒を「オーバープリント」した様子です。上段で発生した白いフチは避けられますが、黒色が薄いため、ベタ塗りした黒が透けてしまっています。
印刷所によってはK=100%の黒を自動でオーバープリント処理しています。注意書きがあるはずなので、入稿前に印刷所のガイドラインをお読みください。
図3下段は、K=100%にCMYを混ぜた「リッチブラック」です。K=100%よりも濃い黒色なのでベタ塗りが透けて見えることはありません。ただし有彩色の黒なので、図2のRGBの黒と同じように版ズレで細線が太く見える恐れがあります。
まとめ
- RGBで定義された黒は有彩色(C=91%, M=88%, Y=88%, K=79%)なので、印刷物に使用すると問題が起きる
- 印刷物に使用できる黒は、おおまかに分けると「K=100%の黒」と「リッチブラック」がある
- 細い線には「K=100%の黒」が有効
- ベタ塗りなど濃厚な黒には「リッチブラック」が有効
ノンデザイナー向けの解説なので、実際の入稿データでリッチブラックやオーバープリントを設定する方法は紹介しません。
とにかくお伝えしたいことは、RGBの黒≠CMYKの黒 ということです。RGB→CMYK変換のように見た目で分かる変化ではないので、ご注意ください。
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