第26回文学フリマ東京
開催日時:
開催場所:東京流通センター 第二展示場(東京モノレール「流通センター駅」徒歩1分)
主催:文学フリマ事務局(Twitter:@Bunfreeofficial)
入場無料!
5月6日(日)に「第26回文学フリマ東京」という同人誌即売会があります。
こちらに出展される風野湊さんのブース「呼吸書房」で、小説本『Cipher』を委託販売させていただくことになりました。
委託先情報
委託先ブース:呼吸書房(会場2階 イ-51)
webカタログ:https://c.bunfree.net/c/tokyo26/2F/イ/51
【お知らせ】5/6(日)の文学フリマ東京、幻想長編&短編集、世界一周やモロッコの旅行記など、既刊全冊揃えて出展します!
— 風野 湊@5/6(日)文フリ東京 (@feelingskyblue) 2018年5月3日
そして、黒い紙に黒い文字で記された、山川夜高さんの『Cipher』も委託予定です。どうぞよしなに。|呼吸書房@第二十六回文学フリマ東京/イ-51 https://t.co/BxRsNBnoBg #bunfree pic.twitter.com/9elCUCz7AR
風野さんの作品は文フリ出展第一作目の短編小説集『紙飛行機に眠る月』からずっと購読しています。(現在頒布されているのは新装版です)
短編小説集『永遠の不在をめぐる』では初版の装丁を担当させていただきました。
風野さんの作品は、児童文学的な幻想小説と、風野さん本人の旅行体験をもとにした紀行文があります。ざっくばらんに言えば前者はフィクションで後者はノンフィクションの筈なのですが、小説も紀行文も、「幻想と現実の間のゆらぎ」というか「幻想と現実を踏み越えてしまう瞬間」みたいなものを大事にされています。
私が特に好きなのは、モロッコ旅行の体験を描いた『青と茜と砂漠の国』です。旅行記ですが、「何を使ってどこへ行き費用はいくら」という事実を描いた旅レポではありません(巻末にちょっとだけ載っています)。この本の冒頭はこうです。
本書はガイドブックではありません。
おそらく紀行文でもありません。
では小説か詩集かと言えば、それも違うように思えます。──『お話』、どうやらこれが一番近い。
これは、モロッコを旅したときのお話です。
(風野湊『青と茜と砂漠の国』P.9)
シャウエン旧市街の青い町並みや、雄大なサハラ砂漠の風景は、日本に住んでいる我々からすればとても「幻想的」な憧れの風景です。でもモロッコに住んでいる人にとってはそれが「日常」です。外国人にとって幻想的な風景は観光地化され、遠くモロッコにいるはずなのに日本人観光客がいて日本語が聞こえてしまう。そういった「幻想の崩壊」と、それでもまだ微かに感じ取れる残り香が、とても真摯に描かれています。
風野さんの作品の特長は、幻想文学(フィクション)と旅行記(実体験を元にした作品)が等価に描かれているところだと思います。どちらの作品でも「幻想」が深く尊重して描かれています。
実は一番のオススメは泥臭くて死に物狂いのおんなひとりサバイバルファンタジーである『竜の花嫁』だったり、『永遠の不在をめぐる』内の一作で泣いてしまったことがあったり、風野さんの作品は語り足りません。ぜひ風野湊さんのブースへ足をお運びください!
『Cipher』について
今回委託予定の、山川夜高さん @mtn_river による『Cipher』は、ご覧のとおり、黒い紙に黒いインクで記された特殊装丁の本です。読まれることを拒むような佇まい、黒揚羽の鱗粉を思わせる文字を、ぜひお手に取ってご覧下さい。#bunfreehttps://t.co/rPmza6oVuq pic.twitter.com/oFodK3xJJi
— 風野 湊@5/6(日)文フリ東京 (@feelingskyblue) 2018年5月3日
黒い紙に黒いインクで印刷し、可読性がとても低い、という内容の特殊装丁本です。
もともと2014年に手製本で発行をはじめましたが、2016年からオンデマンドプリントでの制作に切り替えました。風野さんのお手元にあるのは手製本版(ツイート内の写真左)で、現行版(写真右)の方が読みやすいです。
2014年作なので、いま振り返るとちょっと感情的過ぎるだとか反省点はあります。しかし「フィクションと現実の関係」に対する私の態度はいちばん良く現れている作品であると思います。
あらすじ
黒い紙に黒いインクで印刷された「読めない本」。
物語を読むことは、時に悲しい事件の追体験であり、読書によって登場人物のプライバシーは暴かれる。
この本は物語を読み解くという行為自体を問い、物語と登場人物・本と読者の関係・文字が「見える」「読める」(「読み間違える」)ということが一体何であるかを語る。
§
テーマパークのように娯楽芸術が異常発達し、すべてが観光客のために誂えられた「街」。なかでも演劇は街の一大産業であり、巨大劇場「鴉座」がその権威を掌握していた。
労働者向けの安酒場でピアノを弾くXのもとに、「鴉座」の色物舞台俳優・0が来店する。交友をはじめる二人だが、0は日々に疲弊し、Xは離人感を抱えていた。
読書とは、文字や絵を見て内容(物語)を発見する(discover・覆いを取り払う)ことです。読者が知っている「物語」は、読者が読めた内容だけです。しかし、この本はとても読みにくいので、一字一句正確に読むことは難しいです。
黒い紙に黒いインクで印刷しているので、読者は読み解くのに苦労を強いられます。目や感覚が酷使されるうちに、「見る」ことの能動性(見よう・知ろうと頑張っている自分自身)に気づきます。読めずに諦めるも良し、読み間違いながら読み続けるも良し、あるいは、読めるけど、読むのをやめて本を閉じてしまうも良しです。
この装丁は、物語の登場人物から読者に対する「物語を知られたくない」という拒絶です。読者が物語を読まなければ、(読者のなかでは)物語の悲劇を防ぐことができます。
この装丁は、テキストから読者に対する、読者の「読み間違い」への許容です。読者によって物語の「読めたもの」は変わります。ここでは真に読者と作品の一対一の関係が築かれます。
「まやかしだとしてもここは慰めの街で、おれたちはここに流れ着いた身分で、ボロボロになった人達が最期に訪れるための世界なんだよ」
(山川夜高『Cipher』)
持ち込み部数はかなり少なく、在庫も僅かです。文学フリマ当日分は、山川までご連絡いただければ取り置きしますので、あらかじめご連絡ください。(Twitter @mtn_river)
今回は『Cipher』以外の作品の持ち込みはありません。
その他の作品は shop で通販を行っていますが、通販は都合により予告なく休止される可能性もあります。気になる作品がありましたら、お早めにチェックしてみてください。
『Cipher』は立ち読み大歓迎です。イベントの「見本誌コーナー」には置かないので、