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画像:His Other Lives

架空のロックバンド Drive to Pluto の小説を更新しました。
今回は京都出身のバンド SIGNALREDS が登場する回です。

 

1. 更新:『別の人生』

2001年の夏、田邊は先輩ロックバンドSIGNALREDSのドラマー・古屋から、古屋夫婦の赤子がいる家に招待される。そこで彼が封じ込めていた感情が呼び覚まされる。

“演奏中に足を取られて致命的な失敗を犯さないように、徳仁はあらゆる「雑念」を人生から注意深く排斥したはずだった。”

別の人生|https://libsy.net/dtp/his-other-lives

 

引き続き2001年の物語です。2001年は『She Sells Sea Shells by the Seashore』といい『she/see/sea』レコーディングといい忙しいんです。(えっ20年前!?)

今回は演奏のない日常会です。

 

2. 加筆修正:『ノート / コード』

1998年、下北沢のライヴハウスの企画でSIGNALREDSと出会った後日のこと。SIGNALREDSボーカル・小澤に呼び出された秋山と、小澤を呼び出す青野の話。

“金髪の少年には似合わない、ぼやけた、ピアノジャズが、真昼でも薄暗いカフェー店内の静寂の隙間に流れている。”

ノート / コード|https://libsy.net/dtp/note-code

 

今回のアップデートにより小澤の京都弁が濃くなりました。こちらもよろしくどうぞ。

 

また、Drive to Pluto と SIGNALREDS の設定を画像にしました。Twitterにはupしましたが、これは次の記事にまとめておきます。

 

以下は『別の人生』のあとがきです。前回の『BlueWall / 降霊術』のあとがきよりは書くことがないので、制作中に聴いていた曲などを紹介しています。作品の読了後によろしければお楽しみください。


『別の人生』あとがき

仮タイトルについて

まず、タイトルは思いつきませんでした。仮にでもタイトルを決めてしまうとけっこう仮タイトルに引っ張られますね。

他の案では『Wish I Were Here』とかあったのですが、ピンク・フロイドが好き過ぎるだけだろとボツにしました。ピンク・フロイドは《Wish You Were Here》というアルバムが好きなんですよね……『オトノヨキカナ』のあとがきでも同じことを言っていますが。(思えば『フラジェル』もクソ適当なタイトルですね……イエスが好き過ぎるだけ)

ともあれ作品URLとサムネイル画像の部分で、“His Other Lives”(複数形である)と明記できたので、それだけ伝われば十分かなと思います。

 

価値観

本作とほぼ同時に書いて次に公開する予定の作品があるので、そちらも早めに見せられたら良いのだが、けっこう扱いが難しい作品になった。短く淡々とした文体で、演奏シーンはないし、本作の雑誌誌面のような飛び道具を使ってなく、既存のシリーズでは『フラジェル』の続編みたいな位置づけになっている。

そこでは、ある素朴に良いとされる価値観または規範あるいは摂理に対して肯定と否定のふたつの立場を描いた。すごく微妙な機微でもって価値観に対するオルタナティヴを提案できればいいのだけど、人物が価値観に染まっていく様子にも取れるように書いたので、結局人物の立場がどちらなのかは簡単に分からないようにしている。

更新:Drive to Pluto『BlueWall / 降霊術』 – あとがき

あまり真意を明かす必要はないと思ったので、これはこれだけの言及に留めます。

少なくとも、作者はそれに対して肯定と否定の片方だけをしません。ここ数年のインターネット論壇では、ダブルスタンダードな態度はよく糾弾の対象にされますが、私の書くものは論文ではなく、複数の登場人物が生きている小説なので、私は別の立場を同時に書きます。

 

サムネイル画像の元ネタ

Godspeed You! Black Emperor のアルバム
Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven』, 2000

 

Q. 『Wish You Were Here』と同じく、単にめっちゃ好きなだけでイメージを使いましたか?

A. はい。

本当に悲しくて美しいアルバムなのでオススメです。

 

聴いていた曲

実は2001年以前の曲が1曲しかありません(時空はねじれます。これは後世の創作ですから)

リンク先は Apple Music です。いずれの曲も探せば Spotify にもあると思います。

 

(1) 七尾旅人『どんどん季節は流れて』, アルバム『billion voices』, 2010

 

(2) American Football『Never Meant』, アルバム『American Football』, 1999:

ところでAmerican Footballは読者である友人が「Drive to Plutoの楽曲もアメフトみたいな足し算的に積み上げていくマスロックだったらいいな」と教えてくれたバンドでした。

 

(3) 中村佳穂『そのいのち』, アルバム『AINOU』, 2018

Live ver. 動画4:20〜

 

(4) People In The Box『あのひとのいうことには』, アルバム『Kodomo Rengou』, 2018

割と常に念頭にある曲。

 

(5) GRAPEFVINE アルバム『BABEL, BABEL』, 2016

作中には直接的には反映されていませんが、2021年春夏はずっとこれを聴いていました。新譜はまだ、聴いていない……

 

次のお話(予告)

(時空はねじれているので、作品としてお目見えするときにはここから変わる可能性があります)

 

 夏に地元んライブハウスでワンマンやったとき。鴨川沿いのキャパ200ぐらいのハコなんやけど、満入りでなあ。

 終わり前の最後の何曲かをぶっ続けで弾いてるとき、フロアの最前列のシモテでよう熱心に見てはるお客さんがいてな。人相は覚えてへんし、やっとるあいだに見る余裕もないが、俺らのファンにしちゃあ、何だか大人しい感じがしてな。単なる印象やけど、ライブに来るお客さんの印象ってあるやん。おたくらのファンとうちのファンは雰囲気違うかもしれへんとか、そういうやつやけど。その人は、どうも場違いなくらい清楚というか、まっさらすぎる感じやった。暗いフロアで姿がよく見えたから、白い服着てた気がすんねんけど、わからへんな。その子がどうにもじいっと俺を見つめてはるんやから、俺が最後に『鷹について』のリフでステージ前に立つときに、俺も妙に気になって、彼女の前に行ってずっと弾いてあげたんや。あんまりファンの子と目合わせんようにしてるから、彼女の顔はよう見いひんかった。

 それで一旦締めて、アンコールでステージ抜けて、また同じ場所に戻って、あいさつにMCに立ってフロアを見てみると、ん? と思て。さっきの彼女がいない。ちょっと驚いて一瞬声がつかえたけど、そのときは帰ってしもうたんかなーってアンコール曲をなんぼかやって終わりにしたんやな。

 打ち上げに飲みに行く前に、俺、煙草切らしとって、ひとりで外に買いに行ったんや。夏の京都やろ? お湯ん中を歩いてるようなじめぇっとした熱帯夜で、早う済まそうって歩いてると、ふと、さっきのひとを思い出してな。満員のハコで最前列にいたお客さんが、アンコール待ちの間に他のお客さんを避けて帰れるんか? って。それで、考えてると、人相は覚えてへんかったけど、彼女の雰囲気だけはハッキリ思い出せてな。髪型や服装なんかは分からへんのに、頭の先から爪先までの印象は確信できるんや。

 でも可怪しいやろ?

 お客さんは確かに最前列に居ったけど、お客さんはいつもフロアのバー(手すり)の向こうに居てはって、ステージとフロアのバーの間は機材やスタッフが通るから間が空いとるやろ。この間にお客さんは入れない。だからお客さんの顔は見えても、お客さんの足元を俺らが確認するのは無理やろ?

 なんで俺はあの子のこと爪先までハッキリ覚えとったと思う。

 打ち上げに戻って、ライブでは井上がいつもシモテにおるんやけど、ちょっと聞き出そうとしたら、何だよお前、ずっと俺のこと遮って端っこで弾いとったの何だったん? って、あいつは酒飲んで真っ赤な顔で何もないふうに笑っとったし、俺もたまには端っこにいる子にも見てもらうファンサービスやって返したんやけど、酔いはさーっと醒めてってな。ドラム叩いてる古屋さんは客席の足元なんざ見とらんし、御手洗はカミテに居ったから見てへん。

 俺はまだあの子を覚えとるよ。

 どう考えても、あの子は居るはずのない場所にいた。

 

2001年9月。猫のように現れて風のように去ったあの子がいなくなってから、ひとつの季節が過ぎようとしている。塔は青空を背景に倒壊して、俺はどうしたらいいか分からなくて、誘拐されたさきで幽霊の背中を探している。

 

かなり長くなるので、Webに掲載するときに一緒に単行本にすると思います。

Author : 山川 夜高

山川 夜高

libsy 管理人。DTP・webデザインを中心とした文化的何でも屋。
このサイトでは自作品(小説・美術作品)の発表と成果物の紹介をしています。blogではDTP等のTIPSを中心に自由研究を掲載しています。
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