act.1

(顛末)

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93:名無し(ビビ派)
語尾に「全裸で」をつけると面白くなる
みんなもやってみようぜ、全裸で

94:名無し
今日もこのスレをチェックしてしまう、全裸で

95:名無し
ポタージュスープを煽る悪霊
(全裸で)

96:†闇巫ノ騎士†
1時間につきワンコイン500円で除霊します!
全裸で。

97:名無し
明日、俺、公園に特攻してくる





全裸で

98:名無し
celestaはもう来ないのかな
全裸で

99:名無し
公園で女の子と会いました!









全裸で

100:K缶
何コレ

 

[書き込みが100を越えました 新しいスレッドを建ててください]

これは怪談ではない

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66:K缶
R2、L1、R2、R2、↑、×、→、○、↓、△、
L2、R1、R2、L1、□、□、
START で、おk

67:†闇巫ノ騎士†(エーコ派)
サンクス
この機能知らんかったわ…スタッフもよく仕組んだよな

68:名無し(クイナ派)
今日のIXスレ

69:名無し(ブラネ派)
↑ちょwwwクイナ派www幸せアルよwwww

70:celesta
こんばんは。ご迷惑をおかけしました。
さっき、あの公園を訪ねてきました。

71:†闇巫ノ騎士†
celesta殿!無事であったか

72:celesta
>†闇巫ノ騎士†さん
はい、大丈夫です(o^-^o)

公園に悪霊はいませんでした。ここのスレ主は偽物でした。私は公園でスレ主に会いました。スレ主さんは深く反省していたようなので、もうここに来ることはないと思います。

そもそも公園に幽霊はいません。実は全部、近所の人のイタズラだそうです。私はその人にも会ってきました。その人はもうポタージュ様を止めると言いました。
近所にも迷惑だから、公園にポタージュ様を見に来るのも止めてほしい、と言っていました。
私はその人の代理に書き込みをしています。
みなさんに迷惑をかけてしまい、ごめんなさい。

私も、しばらく書き込みを控えます。

73:名無し
スレ主→ポタージュ様なりすまし
ポタージュ様→近所の住人によるなりすまし
二重なりすましって事?

74:†闇巫ノ騎士†
いや、前に公園行ったことがあるけど、確かに缶が浮いたりヒザカックンがあったりetc..
霊気も感じたし

75:匿名希望
>>74
五百円返せ

76:†闇巫ノ騎士†[mail]
>>75 除霊が終わっていないので返還しかねます

>>celesta殿
何かあったらいつでも1コインで除霊しますよ(^.^)

77:名無し(ダガー長髪派)
親父の500円返せ

78:名無し
celestaは女の子?

[あと22件書き込み可能]

これは怪談ではない

 深夜、交番の戸を叩いたのは一人の男であった。男はトレンチコートを羽織った“だけ”の出で立ちであり、前ボタンは全開である。息は切れ切れになり目には大粒の涙を浮かべ、だらりと鼻血を垂らした男は、必死の形相で戸を叩いていた。多重の意味で尋常でない気配を察した巡査・高田 敬司はすみやかに男を中に招いた。
「ごご、ごめんなざい、ごべんばざび……!」
 開口一番に鼻声の謝罪を受け、巡査はひどく困惑した。というよりもまず、目の遣り場に困ってしまった。
「……ひとまず前ボタンを閉めませんか?」
 ばび、と男は震える手でボタンを閉めた。椅子に掛けさせ、高田巡査は巡査長と共に聴取にのぞんだ。男はこう語った。

 たった今、駅近辺から×公園に至るまで、中高生と思われる少女をストーキングした。自分はネットの掲示板で少女と出会う約束をしていた。少女を公園に追い詰めてから、自分はコートを脱ぎ、少女に見せつけた。
 更に自分は少女に強要しようとした。
 すると突然どこからか、何者かに腹を蹴飛ばされた。

「蹴飛ばされた? 女性が、ではなく」
 ぞうでず、と男は涙と鼻水を交えて語る。

 確かにあの公園には、自分と少女以外居なかったはずだ。しかし自分が蹴られたあと、自分の目の前から男の声がし、またもう一発殴られた。でもどんなに辺りを見渡しても、男の姿はどこにも無い。男の声に自首を促され、その場に居るのも怖くなったから、出頭した。

「やっばり居だんでず、あぞごにはポダージュざまがぁ……」
 巡査長は訳が分からず高田に尋ねた。
「何だ? その……ナントカ様というのは」
「ネットで流れている都市伝説です。そこの公園にポタージュ様という悪霊がいるとか」
「ポタージュ様ぁ?」
 馬鹿馬鹿しい。巡査長は疑いを抱いたままであるが、
「ほんどうに居だんでづよぉお!」
 男は真っ青な顔で泣き付いた。この様子だと相当恐ろしい目に遭ったらしい。巡査長はため息をつき聴取を続けた。

* * *

 取調を終え男を帰し、巡査長と別れてから、高田は携帯電話を開いた。

 ――巡査長に「ポタージュ様」を訊かれた時はさすがに焦った。

 先程のポタージュ様の解説に、高田は肝心な点を濁していた。
 高田も、悪霊に遭遇した内の一人である。パトロールと称して公園に向かったことがあるのだが、まさか腰を抜かして逃げ帰ったなんて、巡査長には死んでも言えない。男の恐怖体験に高田は少なからず同情していた。
  彼は個人的にポタージュ様の調査を行っていた。携帯からT市のBBSに接続する。そして目当てのスレッドを発見した。聴取の時から彼の心はその場を逸れていた。

 ――驚いた。まさか「悪霊」本人に会うとは……。

 今日の夕方、ハンドルネーム「celesta」は「悪霊」に対し、「会いに行きたい」と書き込んだ。その時は嘘かと思ったが、男の証言からすると、男とcelestaは本当に出会った。男は「本物のポタージュ様に会って殴られた」と発言しているのだから、現場にいたcelestaもポタージュ様を認知したはずだ。

 BBSにはcelestaの発言があった。悪霊目当てであり、恐らくオカルトファンのcelestaなら、詳しく書き込みをすることだろう。
 しかし高田の予想は大きく外れた。

 ――おかしい。
 ――嘘をついている?

 celestaは「悪霊」のわいせつ行為には一切触れなかった。それは彼女の羞恥であるから構わない。そうではない、彼女は

そもそも公園に幽霊はいません。
実は全部、近所の人のイタズラ

だと言う。そんな筈は無いと高田は思う。あそこまで手の込んだイタズラがあるものだろうか?
 「悪霊」に対峙した事のある高田は考える。イタズラの筈は無い。怪奇現象はみな目の前で起こったのだ。これは尾びれの付いたありきたりの怪談ではない。celestaは怪談目当てに公園を訪れたはずだ。なぜ、素直に本物の「悪霊」に会った事を話さない?
 ふと高田は思う。

 ――celestaは、「ポタージュ様」と関わりがあるのか?

 根拠の無い思いつきだったが、自身の発想に彼の心は少なからず躍った。

 ――celestaは何者かを庇っている。それとも、口止めされている?

 分からないことだらけだった。それでも彼にとっては十分だった。ネットの奴らは偽の悪霊とcelestaのやりとりも、celestaが嘘をついた事も知らないのだから。

 ――俺はきっと世の中の誰よりも、真相に近づきつつある。

 暫くは静観していようと高田は決意した。下手に書き込みをしたら自身の素性が露見てしまう。
 幼い頃に夢見た名探偵や名刑事は、こういう心地だったのだろうか。
 高鳴る胸を抑え、高田敬司は一言だけ返信を打った。

79:K缶
事件にならなくてなにより

0833

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3

 そろそろ宴を止め少女を家に帰さなければと帆来くんが思った頃には、深夜一時を回っていた。また彼女が暴漢に襲われぬよう、帆来くんは家まで送って行く事を申し出た。

「お前じゃなくて、おれが行ってもいいんだぜ?」

 とザムザは反発したが、帆来くんは率直かつ丁重に断った。

「貴方の護衛は事後処理しか出来ないでしょう。襲撃があってからしか撃退が適わない。ならば初めから複数であることを顕示し、襲撃そのものの確率を減らすのが得策です。そもそも貴方は暴力的すぎる」
「いいや、お前は現場を全っ然分かっちゃあいない。本物の暴漢なんて取り巻きに男一人居る位じゃあ気にも留めない。大体お前みたいなヒョロヒョロじゃあ、さっきの露出狂にも勝てないだろうに!」

 こうして互いに何かの火が付き、何を何だとと舌戦は止む気配を見せない。酒が回ると双方饒舌になるのであった。暫く見ていたセレスタも、この押し問答に嫌気が差し、紙にでかでか
『両 方 !』
と書き、間に割り入った。初めからどっちでも良かったセレスタは、呆れた目付きで双方を眺める(眺めるとか見るという語に語弊があるのはもちろん承知している。しかしここでは一つの比喩として読んで頂きたい。というよりもザムザはかなり騒がしい性格の為、彼が何処に居るのか何となくに分かるのだった。話を戻そう)。喋らない代わりに、彼女はなかなか表情に富んでいた。結局二人共が送りの従者となった。

 着いたのは徒歩十分、オートロック式マンションだった。ガラス戸の自動二重扉がセキュリティを物語っている。

「セレスタ……お前、一人暮らしでこれは無いだろ……」

 呆気にとられザムザが呟く。自動扉の前でセレスタは、別れの意を込め、一礼した。そして扉が閉まる。そこを
「ちょっと、待って下さい」
 と帆来くんが引き留めた。

「お前さては、善良な顔して送り狼か!?」
「言いがかりは止めて下さい」

 帆来くんはあくまでも淡々と語った。
「ここ、僕の家です」
「――何!?」

 二重扉の内側の壁に、階層ごとの住民の名字が掲示されている。そこには確かに“404 帆来”とある。背伸びしてセレスタも指を差す。三階の一室、帆来くんの真下であるが表札は無かった。防犯のために名前を出さない部屋は他にもある。
「お前ら顔見知り?」とザムザが尋ねたのを、セレスタも帆来くんも否定した。
「帰宅時間が違いますから会う機会が無かったのでしょう」
 答える帆来くんにセレスタも頷く。そうして二人はナンバーロックを開け建物の中へ、入っていくのにザムザも同行した。彼がスルメをつまんでいるから分かったのだが。

「……何で付いて来てるんですか」
「君は野宿の凄惨さを知らないだろう」
「知らないままで在りたいものです」
「あそこの公衆トイレは雨は防げても、風に弱いって知ってるか?」

 帆来くんは無視を決めこみエレベーターに乗り込んだ。セレスタが入ると直ぐに閉ボタンを押す、しかし、スルメイカを持った透明人間もエレベーターに滑り込んだ。スルメを持っていなければ絶対に分からない。透明人間は侵入のプロであった。帆来くんは掛ける言葉も浮かばなかった。

「君ん家、広さどれ位?」
 ザムザが尋ねるとセレスタは指で三を作った。全部屋3LDKカウンターキッチン付き。
「それで君達、一人暮らしだろ?」
 住人二人は頷く。
「帆来くんも恋人なし妻子なしだろ?」
 返答が面倒になった帆来くんは適当に頷くだけにした。
「……そういうの、ズルくね?」
「貴方こそ、厚かましいと思いませんか?」

 また舌戦が始まろうかとした時、エレベーターは四階に到着した。セレスタがぴょこんと飛び降りる。

 ――セレスタさん、貴女の家は三階でしょう。

 セレスタは帆来くんの目線に気付くと、チッチッチッと指を振った。彼女もまた上がり込む魂胆でいた。そうして家主より先に、少女と透明人間は玄関をくぐった。

「何で帆来くん家ベッドとカウチソファー両方あるんだよ!?」
『金持ちー』
 客人二人は身振り手振りではしゃぎ回った。セレスタはベッドに寝そべり携帯電話をいじり、掲示板用の文章を書いていた。帆来くんもそれに付き合う。
 一方ザムザは冷蔵庫を物色し、「何にも無えじゃん!」と文句を付けた。しかし帆来くんに黙殺され、ふてくされてスルメイカを全部食べた。

 気付けばベッドはいつの間にかセレスタに占領され、カウチには透明人間が眠りこけていた(どこからか、毛布まで持って来ている)。家主は自身の人の好さを呪いながら、仕方なしに床に寝た。翌日彼は腰を痛めた。

50801

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50801

 状況は良くありません。とっても嫌な予感しかしません。交番に駆けこむのが一番安全だと思うのですが、こんな夜遅くに一人でいることを咎められるのは面倒です。私服だったら、まだ問題は少ないでしょうが、私は今制服です。この制服自体は学校指定の制服ではありません。けれど、学生である事を知られたり、学校に知られるのはやっぱり嫌です。という訳で私は夜道を、何とか巻けないものかと小走りしているのですが……。

 気配からして、駅前からのトレンチコートの男性は、まだ私の後を付けています。コートの下にズボンを穿いていません。恐らくその下も。夜はまだ冷えるのに、よくやるなと感心しますが、現在私は当事者ですので、悠長な事は言っていられません。おまけに私には行かなければならない所があります。

 今晩、ある人と待ち合わせをしています。ただし正式な待ち合わせではなくネット上での口約束だから、行っても誰も居ないかもしれない。不安定な約束。いないが九割、もしかしたらが一割。
 そして待ち合わせた相手が善人であるかも分からない。ひどい悪人かもしれない。何せ「悪霊」を名乗っているのだから。待ち合わせの場所、公園に行ったら、私は悪霊に殺されるのでしょうか。取り憑かれて頭がおかしくなるのでしょうか。死ぬのはまだ嫌だけど、なぜだか、それでもいいかなと思います。殺されるなら珍しい方法で殺されたい。霊に殺されるのならちょっぴり面白い。

 悪霊の存在を信じつつも、私は悪霊を信じていないのでした。どうせ全部デマで、公園へ行っても誰もいないだろう事を、私は知っています。だから悪霊に殺されるなんてありえない。ありえないから、どこか期待しているんです。99%以上の安心と1%未満の最悪が欲しい。

 いつの間にか私は夜道を走っていました。前方にぽつんと灯りが見えます。人気も遊具も無い、さびしい公園。あの公園です。
 私は真ん中にある、たった一本だけの街灯の下に立ちました。この公園の灯りは、これと、自動販売機と、トイレしかありません。四方は木に囲まれ薄暗い雰囲気です。悪霊の噂が立つのもおかしくないような陰気臭さ。いや、噂ではありません。私が今から彼に会えば、噂では無くなるから……そんな、わずかすぎる期待。走ったせいで息が切れて、頭が少しぐらぐらします。そういえば、あの男が居ません。

「celestaちゃん?」

 突然、後ろから呼ばれました。男の人の声。振り返って、愕然としました。

 だって、居たのは、さっきの男だから。

「驚いた? ボクが“悪霊”だよ。本当に来てくれるとは思わなかった。celestaちゃん」

 嘘だ。じゃあどうして、さっきまでストーキングしてたんですか。

「ボクがホンモノの“悪霊”だよ。驚いて声も出ない?」

 違う。絶対に違うのに、何でそんな嘘をつくの?

「どうしたの、せっかくcelestaちゃんが会いたいって言うから来たんだよ? それとも今更怖気づいたの? それは無いよね?」

 男は、片手でコートのボタンを外しながら、じりじりと迫ってくる。

「そうだよ。こんな夜遅くに、女の子が一人で人気の無い所へ来ちゃったんだから。この意味分かるよね? celestaちゃんの自業自得だよ?」

 逃げたい。逃げたいのに、怖くて足が動かない。
 男は目の前に立ちはだかっています。下半身は、見ない。嫌だ。気持ち悪い。

「悪霊って、つまり悪人だよ? 無事におうちに帰れるとでも思ってたの? オレは、楽しみに、してたんだからさあ……」

 嫌だ。違う。嫌だよ。だってこの人、ただの人間だよ。こんな簡単な可能性に、こんな、ただの変態とだなんて、嫌だ。こんな可能性に従うのは嫌。
 軽率だった自分に嫌気が差します。世の中はバラ色じゃなくても、緑か紫色くらいで、可も不可も丁度いいと思っていたのに。肝心な時でさえ声の出ない自分も嫌いです。
 そして、この期に及んで、私は誰かの助けを信じている。夢を見すぎている私がいます。――

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