「公園」について
昼食後は札幌の市街地を散策した。時計台やテレビ塔のあるエリアだ。
札幌へは小学生の頃いちど旅行で訪れたことがあった。そのときも時計台とテレビ塔を見たが、まあ普通の観光地という感じで、特別印象には残らなかった。
3年前から、「文学フリマ札幌」という文芸同人誌即売会がテレビ塔2階にある貸会場で年1回開催されている。私は第三回文学フリマ札幌の出店者カタログのDTPに関わった。文学フリマ札幌の仕事をしたくせに、小学生以来テレビ塔を訪ねたことがなかったので、「ここかあ〜」という感慨にひたりながらテレビ塔の前を通った。中には入っていない。時計台もバスの車窓から眺め、「これかあ〜」と思っただけ。
今年10月にオープンしたばかりの文化複合施設「さっぽろ創世スクエア」に案内してもらった。劇場・芸術展・イベント会場・図書館が一体になった施設で、図書館「札幌市図書・情報館」はコワーキングスペースも兼ねていて、喫茶・Wifi利用ができる。
図書館では、芸術の作品集・デザイン集や、デザインの技法書も充実していた。予約制の電源付き座席もあるので、ここに端末を持ち込めば勉強も仕事もなんでもできそうだった。
北海道・札幌・アイヌに関する本もとても充実していた。
収蔵書籍の貸し出しは出来ないが、そのかわりに館内のカフェで買ったものや持参の飲食物を持ち込むことができる。会話による交流も推奨しているので、静けさに気を使う必要もない。
座席を予約して1日みっちり学習・仕事ができる空間でもあるし、ふらっと訪れて適当な書籍を読んでくつろぐことができる環境でもある。東京じゃできないなあとつくづく思った。一瞬でごった返して、ロクに座席につくことも出来ないに違いない。
「日本には公共スペースが少ない」とよく聞く。街の中に、自由に座ってくつろいだり、他人と話を交わせる場が少ない。座席があるのは商業施設(カフェ)ばかりで、お金を使いたくない人々はコンビニ前にたむろするしかない。
この図書館は屋内にある「公園」という印象を受けた。座席に座って、好きなものを飲みながら、自分の過ごしたいように過ごすことができる。10月にオープンしたばかりのこの「公園」が今後どうなるかはわからないが、もしこの「公園」が今後共うまくいけば、札幌ではひとつ公共スペースが成功したということになる。
もし札幌で「公園」が成功するなら、「日本に公共スペースが少ない」のではなく、「東京に公共スペースは作れない」のではないだろうか。いくら「公園」を作っても、東京は膨大すぎて、東京の人口をそこに収めることは絶対に出来ないのではないか。作ったそばから人が溢れ、誰も落ち着くことは出来ないのではないか。
……と、いまでも考えている。
東京都内には「読書のためだけの私語厳禁のカフェ」がいくつかあり、そこはとても居心地が良いのだけど、カフェ(商業施設)なので「公共」「公園」にはなれない。っていうか都民にとって、札幌市民が図書館で読む「北海道」「札幌」「アイヌ」等に相当する、都民にとっての「東京」はあるのだろうか(中野区民にとっての「中野」はあるかもしれないけど、「東京」という意識はない)、と、連想と疑惑は止まらないので、一旦筆を置く。
北海道の回転寿司
御託はともかく、夕食には、ルチアナ家おすすめの回転寿司屋に案内してもらった。レーンの内側で板前が握っているので回転寿司のなかでも新鮮だし、ルチアナさんがさび抜きを頼むので、食べたネタの半分以上は都度握ってもらたものだった。
文学フリマ札幌に参加した方が「とにかく回転寿司が美味しかった。高価ではないはずの、アジのような普通のネタが格別だった」と語っていたので、私もとても楽しみにしていた。
ネタが大きい。めっちゃうまい。もうアホな感想しか言えない。うまい。
いままで見たことのないネタもあった。青いブツブツ……アマエビの卵らしい。ルチアナさんには「青いから取るだろうと思った」と言われたけど。
味は白子のようにクリーミーなエビ、というか、エビ味が極めて濃厚なエビマヨという感じだった。青色はヘモシアニン(銅イオン由来の青色)によるものらしい。エビのような節足動物のほか、タコなどの軟体動物にも、これと同じヘモシアニンの血液が流れている。
青い食べ物は美味しそうに見えないかもしれないけど、味は格別だった。しかも卵は鮮度が良くなければ出回らないから、本当に上質なネタだったんだって。信じて……
ほか貝類もめちゃめちゃ美味かったが、食べるのに夢中になって写真がありません。
あとウニ! ウニだよ!
正直、私はウニが苦手だった。むかし、パック寿司のウニに余り物を食べさせられたとき、海産物というか海辺で感じられる癖・エグさ・生臭さ・磯臭さ・苦味・ぬるい不浄感、それら「海のダメなところランキングトップ10」をすべて濃縮した味がして、それ以来ウニを警戒して食べられなくなってしまった。
北海道のウニなら平気だろうと頂いてみると、新鮮なウニは 「海産物のここが好き!ランキングトップ10」をすべて濃縮した味がして本当に美味しかった。ウニだけで海産物のランキング上位を独占できる。この鮮度が落ちると、海のダメなところワースト10に直結するのが恐ろしい。
メニューを見ると、この店では「こぼれいくら軍艦」も提供していた。軍艦の上にこぼれるほどのいくらが乗っている名物メニューだ。値札の横には「(実演あり・なし)」と添えられていた。実演? と首をかしげていると、隣の席の方が注文したようだ。
「くじ引き大当たり」のようなハンドベルが鳴り響き、店の客が注目するなか、板前2人がやってくる。
「本日は宜しくお願いします」
と、片方は山盛りのいくらを手にし、もう1人はドドンと太鼓を鳴らす。
「それでは……ワッショーーーーイ!!」
「ワッショーーーーイ!!」
「ワッショーーーーイ!!」
「最後にもうひとつ、ワッショーーーーイ!!」
と、大騒ぎしていくらをこぼしていた。
なるほどね、実演。
今日はシマエナガ探し&食い道楽で、遊び倒した感じがした。明日は予約した温泉宿に一泊する。登別ではシマエナガに会えるだろうか……?
次回予告
「俺より強い奴に会いに行く──!」制御不能の暴れ鼠は“試される大地”でも大暴れ。血を見るまでやめられない、魂と魂のぶつかり合いが、ここ「登別」で開かれる!!
次回『窮鼠エゾヒグマを噛む』お楽しみに!
参考文献・webサイト
- 藤巻裕蔵 監修, 小堀煌治 解説 (1990)『新版 北海道の野鳥』北海道新聞社
- 荒俣宏 (1990)『世界大博物図鑑 第4巻[鳥類]』平凡社
- アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ(アイヌ民族博物館)
- 北海道札幌の自然「ゴジュウカラ」
- 北海道神社庁 ……現在も頻繁に更新しているwebサイトなのにテーブルレイアウトはどうかと思います
- さっぽろ文庫インターネット版 39巻『札幌の寺社』 ……ビューワーのバージョンがWin/Macともに最新OSに対応していなく使いにくかったです
「人間を襲う悪い熊を退治したヤマガラの自叙」があり面白かった(P. 141)。


