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『She Sells Sea Shells by the Seashore』 A6変形 16ページ
2013年5月5日 初版
ギフトとしてのささやかな小説。
光に透き通るトレーシングペーパー製の手製本作品。それぞれの紙片に1シーンが綴られている。
全てのページは綴じておらず、ページ番号もなく、読む度に順番はバラバラになり、エピソードは「シャッフル再生」される。
沈む「僕」の思索と煙のように軽やかな「She」との、初夏の淡い思い出話。
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これは思い出話であり、書くことに意味はないし、書いたことは音遊びで、これは物語ではない。
どこから読んで貰ってもいいし、書いた当人も順番を忘れている。
登場人物はたったの2人。
その実在の真偽もすべて任せよう。
出来れば、窓辺とか、明るいところで読んでほしい。
『シ』 文庫 102ページ / 非売品
波に洗われたように浸蝕された本。ページはえぐられ、文字はところどころ読めない。
不確かなる「僕」の思い出と「貴女」の記録が混在する。
目次 *再録作品
新宿
水たまり
病院
寝室
ブルーシート *
架橋
キッチン
アムステルダム *
水族館
海浜公園
沖合
“35km離れた海の潮が聴こえる夜だった”
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『沈黙』 文庫 100ページ / 非売品
両側を綴じた、読めない本。片方は一般的な文庫本装丁、もう片方は和綴じとし、どちらも本として成立している。
『沈黙』は本が「当たり前に読めるもの」であることへの問いかけである。
本(お話)は主人公の内的体験を記述する。私たちは本を通じて主人公の身の上話を読む。人間の生活のなかには誰にも語りたくない経験もあるだろう。しかし、私たち読者は本を通じて、それがフィクションであるにしても、他人の秘密を知って満足する。私たちは他人の秘密や人生を知りたいという欲求:認識偏愛(エピステモフィリア)を持つ。秘密をあばき、結末を知り、真相をみたいという支配欲がある。
『沈黙』は認識偏愛に対するアイロニーである。この本を読もうとするのなら、読者は装丁の片方を破壊しなければならない。この本の装丁はどちらも完全であり、どちらも軽んじられるものではなく、復元することは二度と出来ない。この本を読むことは――ここに存在する秘密を知ることは――取り返しのつかない破壊行為に他ならない。
本を読むことは支配欲を満たす行為であり、読書は取り返しのつかない行為であることを、この作品に込めた。
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