works / 作品



『シ』 文庫 102ページ / 非売品

波に洗われたように浸蝕された本。ページはえぐられ、文字はところどころ読めない。
不確かなる「僕」の思い出と「貴女」の記録が混在する。

目次 *再録作品
 新宿
 水たまり
 病院
 寝室
 ブルーシート *
 架橋
 キッチン
 アムステルダム *
 水族館
 海浜公園
 沖合

“35km離れた海の潮が聴こえる夜だった”

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『沈黙』 文庫 100ページ / 非売品

両側を綴じた、読めない本。片方は一般的な文庫本装丁、もう片方は和綴じとし、どちらも本として成立している。

『沈黙』は本が「当たり前に読めるもの」であることへの問いかけである。
本(お話)は主人公の内的体験を記述する。私たちは本を通じて主人公の身の上話を読む。人間の生活のなかには誰にも語りたくない経験もあるだろう。しかし、私たち読者は本を通じて、それがフィクションであるにしても、他人の秘密を知って満足する。私たちは他人の秘密や人生を知りたいという欲求:認識偏愛(エピステモフィリア)を持つ。秘密をあばき、結末を知り、真相をみたいという支配欲がある。
『沈黙』は認識偏愛に対するアイロニーである。この本を読もうとするのなら、読者は装丁の片方を破壊しなければならない。この本の装丁はどちらも完全であり、どちらも軽んじられるものではなく、復元することは二度と出来ない。この本を読むことは――ここに存在する秘密を知ることは――取り返しのつかない破壊行為に他ならない。
本を読むことは支配欲を満たす行為であり、読書は取り返しのつかない行為であることを、この作品に込めた。

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