現存する記念碑

『現存する記念碑』2013.11.26-11.30
柱に小説、3704字
多摩美術大学八王子キャンパス絵画東棟1Fホールにて

 

仮設小説。
テキストは多摩美術大学八王子キャンパスの地理的条件をもとに書き下ろし、
展示期間のみ存在するインスタレーション(仮設)。
柱にらせん状に記された小説を、周りをぐるぐる歩いて読む。

芸術の媒体としての「小説」は以下の特徴を備えている。
1.モバイルである:本も電子書籍も巻物やパピルスも、どこにでも持ち運べる。
2.頒布される:多くの人の手に渡る。
3.鑑賞に運動性はない。

これに対し本作は、
1.場に固執:柱から切り離すことは出来ず、本文もその場所に由来している。
2.永続しない:数日間しか世に存在しない。
3.鑑賞に必ず運動を伴う。

記念碑とはまさにその場に記録を永続させるための装置である。
小説という芸術表現もまた永遠性を前提にしている。広く永く読まれることを目指した芸術活動である。
小説は目で追いページをめくる。いつでもどこでも何度でも鑑賞することが出来る。
小説を記した活字は、読みやすいよう最適化されている。

一方、美術におけるインスタレーションは、場を借りた一時的な表現であり、いずれ撤去が待ち受ける。
美術作品は殆どの場合唯一無二であり、その場に赴くという行為がなければ作品を味わうことは出来ない。
周を歩きながら目で追う行為は、酔いや苦痛などの身体性を呼び起こさせる。

本作は小説作品である。
小説の特性と真逆の特性を備えながらも、これは小説である。

11月最終週の数日だけ、これは『現存する記念碑』だった。
今はもうどこにも存在しない。

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