ご感想
今までに頂いたご感想を掲載しています。
#文学フリマで買った本
— まなつ (@tranchran) March 17, 2023
山川夜高さんの特殊装丁小説『Cipher』の感想です(長文なので画像にしました)。
※”0”の表記をどうしようか迷ったけども、読んだ時の見た目にあわせてØで代用してます🙇♀️https://t.co/P5FOgxtsyc pic.twitter.com/ww8YxyUTYe
All the world’s a stage, and all the men and women merely players. They have their exits and their entrances, and one man in his time plays many parts.
(この世は舞台、男も女もその役者に過ぎない。舞台に登場しては消え、一人の人間がさまざまな役を演じていく)読後真っ先に思い浮かんだのは、シェークスピアのこの名文。
“読者を突き放す「読めない本」”というコンセプト通り、黒い紙に黒いインクで印刷された文字にはやや視認性の欠陥をはらむものの、工夫すれば読めなくはない絶妙なレベル。オンデマンド印刷の黒がテカる特性を活かした演出がとてもよかった。
(とは言え、世界に没入するために適切な明るさを模索するところから始まり、没入の阻害との戦いで集中を途切れさせられ、なんともまぁ、物語に近づくのに本当に手間がかかる。そのことが大変でありながらも読書体験としての初めての感覚で愉快でもあった)物語は謎めいた「街」に住む、あまり感情の起伏が激しくないピアノマン「X」 を主人公に、どこか閉塞感の漂う独特のムードで展開する。
Xは淡々としており、一人称の文章でありながら三人称の文章を読んでいるかのような他人事感が強い。だが、ある日彼の目の前に現れた「0」と関わることにより、0に関する事柄には少なからず感情の起伏のようなものが見え隠れするようになるのが印象深かった。「街」に住む人の一部がそのあり方に不信感を抱きつつも、変えることを諦めているその様子は、我々の住む社会を風刺しているようでもある。才能のある者しか住めない「街」。だが明言はされぬ暗黙のルールを破っても住めぬ「街」。そうなると、「街」 から消えたという人々とは…… (この“消えた人”の解釈によっては、Xと0の、互いの日常や意識に変化を生んでしまう相互関係は、非常に危ういものだと感じる)。謎は謎のまま、推測の域を出ない解釈のみが許され、明確な答えのないままぷつりと消息を断つように終わるが、それはこの物語を読んできたものにとっては「さもありなん」とでもいうのか、納得のいく結末にも思えてしまうから不思議だ。物理的にも感情的にも読者との隔たりを突きつけてくる姿勢が一貫しているのが潔くていい。細部まで著者の美意識が詰まっている。
この物語は、読後も読者の中で続いていく。舞台装置が巧みな演劇を観た帰り道のような気分で、同行者と謎解きの解釈を伝え合いたくなるような気持ちを呼び起こす。さて他の人たちは、どんな解釈をしたのだろうか?
インディーズだからこそできる、面白い企みにあふれた1冊。
『Cipher』の“不可視性”は拒絶、そして抱擁の力をもつと思う。外側にいるうちは断絶がある。踏み込んだ先には微かな共鳴がある。この表現はネタバレ防止の意味で簡略化したものだけれど。
— らぼ (@04_110301) May 28, 2022
暗闇はあくまで演出だ、と言われるかもしれないが、自分には暗さそのものがなにかしら無意識の実在に思えた。→
もしわたしが2014年に『Cipher』を読んでいて、2019〜2022年現在、変わってしまった世界で再読できたならば、また違った感想がでてきたと思う。でも現実時間は常に先へ進んでゆくし、次の変わる世界のもとで再読するためのチケット(読了したという過去)を自分は既に手に入れている。
— らぼ (@04_110301) May 28, 2022
生の音楽や舞台などの一回性は尊い。読書は内容は変わらないが、読み手である自分は、どんな本を何度読んでも、均一なコンディションであることはない。鑑賞対象には自分すら含まれることがある。世界または他者、あるいは自分の変化を感じることが、自分の読書の根拠だと改めて考えさせられた。
— らぼ (@04_110301) May 28, 2022
『Cipher』物理書籍を手にして幾らかの時が経っていますが、いまだに感想だとか感懐だとか、言い表せることばがなくて、ただ何度も読んでいます。わたしはファストに物事を消費するようにこの作品を読みたくないと思った。幾度も暗闇を重ねて目を凝らす。>RT
— らぼ (@04_110301) January 13, 2022
いえ、もう…すみません、最後の最後まで何度も拝読したのですけど、この感情に適当な言葉がまだ見つからなくて。仰る通り探っている最中です…自分にとってとてつもなく印象深い作品であることはお伝えしたいです。こちらこそ、執筆してくださってありがとうございます。
— らぼ (@04_110301) January 13, 2022
体験者的には平日昼間の電車、普通車の日当たりの良い席を陣取って読むのが一番読みやすかったです。室内で読もうと思ったら、明かりを強めに取らないと可読性を維持できない反面、心の目で読めているような気にはなってくるので大丈夫です!
— 深夜 (@bean_radish) April 19, 2020
自分は物語の中の最後の一文が好きで、そのためだけに最初から読み返そうとしてはたまに心くじけてスキップ読みしたりもしているのですが、開いたページの軽妙さをリズムを断片を受け取るだけでも多幸感を得られるので、気軽に読めない読書を楽しむ方法はいろいろです。
— 深夜 (@bean_radish) April 19, 2020
「Cipher」はこんな感じで書影を撮っても本文がネタバレしにくく、デフォルト顔でページに挟まるピアニストXの作中でのがらんどうな人間加減を堪能でき、多くの人間がこの写真が本文上下逆転して写されていることに気づかない。そんな1冊ですが感じ方には個人差があります。 pic.twitter.com/z04G0M6rdX
— 深夜 (@bean_radish) April 19, 2020
読もうとしなければ、暴こうとしなければ読めない、という仕掛けが、物語が進むごとに指先から毒のように染みてくるような感覚を覚えています。
— 深夜 (@bean_radish) April 19, 2020
これものを想定して読むと静かな文調で受信しやすさはあるかもしれません。が、にじみ出る水の空気がありますし、入門作としてもおすすめかもしれませんね
Cipher好きなので読んでほしい…黒いページから文字を浮き上がらせる体験そのものが未知で面白いし舞台や雰囲気格好良いので……
— ぱたゆら (@mizutamari0) March 27, 2020
結末の最後の一文の突き放し感と激情が好きでね…楽しかった舞台が終わっていくことは当然なのにつ…続きは…?と思ってしまったこの気持ちはどこへ持っていけばと当時思いました
— ぱたゆら (@mizutamari0) March 27, 2020
芸能人がSNSで自分のオフを発信して、ファンが日常(裏面)を覗けるようになったけど、夢と現実の区別と言うか、虚像と実像の境目と言うか、その線引きが曖昧になったなあと思う。そのふたつは演者が媒介しているから連動しているし共有している部分もあるし、完全に切り離すのは無理かもしれないけど
— ふみ (@f_s_i_b_w) June 11, 2019
黒い紙に黒いインクで刷ってみました、だけならばそれはただの技術的習作である。だがそれが、読者によって物語を暴かれることへの抵抗、という意味合いを与えられることにより、「必然性」を得て「表現」、となる。このような本が僕は好きだし、自分もそのような本を作りたい。
— みつまる (@Mitsu_Maru) May 6, 2018
電車用にcipherだけ忍ばせておいたらあまりに読めないし、ケータイは電池切れでめっちゃ暇になってしまい、その程度の用意しかしなかったこともひとつの鑑賞なのではと噛み締めてた(電車の床とか見てた)
— 各務都心@マダミス販売中 (@toshinthepump) December 24, 2016
cipher、俺の眼力じゃとうていよめなくて、積読にすることで俺はこのアートと向き合うことにしました
— 各務都心@マダミス販売中 (@toshinthepump) December 24, 2016
ついに、とうとう、山川夜高さん(@mtn_river )『Cipher』を読了。読んでしまった…黒い紙に黒いインクの本、なんだってこんな読めないような本をと正直少し思っていたのですが(ごめんなさい)終わりにようやく理解した。この形の本でなくてはあの言葉は成り立たない。
— 風野 湊 (@feelingskyblue) January 16, 2016
読了したとはいえ、見えない文字に四苦八苦しながら途切れ途切れに読んだおかげで前半をかなり忘却してるのでもう一回読む。(※後半辺りから文字に集中するコツを掴んでスルスル読めるようになった。最後まで苦闘しながら読みたかったような気もする…)
— 風野 湊 (@feelingskyblue) January 16, 2016